三人分やってあげるよ

「大豆田とわ子と三人の元夫」が始まった。
今期見たいドラマとして、僕がこの作品を挙げたとき、僕の好きな女の子は「もういいかな」と坂元裕二ドラマについて食傷気味であることを宣言した。だが僕が「じゃあ一人で見るね」と言い出すと、「面白かったらムカつくから見る」と言い、付き合って見てくれることになった。こういうところもかわいいと思う。

結局、第一話を見終えて僕の好きな女の子はなんだか不服そうに「面白い」と降伏してみせ、第二話の予告映像にて「充電完了」と呟いた岡田将生に僕らは二人して「うおーい!」と声を上げたのだった。

坂元裕二が脚本を担当する作品を見るたび、僕は「この人は大喜利が強いなあ」と思う。昨晩見終えた2話で、娘に自分たちの関係性が変わっていないことを訴えるために「〇〇より嫌い」をいくつも挙げていくシーンはそう感じざるを得ない例の一つ。そして僕はこの脚本家の大喜利力に感嘆すると同時に、セリフを吐く役者の方々の凄さを思い知る。なぜならこの作品に散見される「大喜利の答え」は、フリップに書いて発表するか、ひな壇に立つ者から放たれて然るべきレベルなのだ。とてもじゃないけど、ごく一般的な生活者たちから零れる会話のレベルに相当しないような。それを登場人物が口にしてもおかしくないように、浮かないように、「名言風」になりすぎないようにするのにどれだけの技術が必要なのか。香取慎吾の演じる孫悟空が口上の後に放つ言葉ではなく、生活者たちがつむぐ言葉なのだ。
今までも坂元裕二脚本のドラマに参加している松たか子松田龍平の発話はやはりたまらないマッチ感があるし、角ちゃんも生活者を登場人物とするコントを行う東京03のメンバーだけあって圧巻の演技ですね。
そして、岡田将生が演じる「シーズン3」もとても素敵でした。エリート弁護士というと、一見とっつきにくいような感じもするけれど、第二話冒頭で挫折の経験が明かされたり、運動神経の悪さから明るくなかった学生生活を垣間見ることができたり、何よりとわ子を引きずりまくっている愛すべきルーザーとしての一面がある。負け顔を見て好きになる僕は、まだまだ未熟かもしれないけれど、でもやっぱり愛おしい弱さは人間に必要だと思う。

こんな会話をしてみたいなあ。
同じく坂元裕二脚本「anone」の、ハリカちゃんと彦星くんが「ノーベル賞を誰にあげたいか」を語り合うシーンを見て、聴いて思ったことがある。坂元裕二の脚本ドラマで交わされる会話にはそう思わせる練度がある。

そして僕は幸せ者なので、そういうような、宝物にできる会話を交わせる相手にもう出会っている。

「私も三人欲しいなあ、元夫」
「僕が三人分やってあげるよ」

100人分くらいの表情の豊かさを持つ女の子の側にいるんだから、才能が無くったって三人分くらいは努力しないと。

元夫を三人分なんて、なんだか縁起が悪いようにも思うけれど、御都合主義者の僕は気にしないことにする。